- 作者: 北村薫
- 出版社/メーカー: 朝日新聞社
- 発売日: 2006/07
- メディア: 単行本
- クリック: 17回
- この商品を含むブログ (104件) を見る
物語の展開も、決して派手とは言えない。別の人が語れば数行で通りすぎるかもしれないささやかな物事を、丁寧に見つめる眼と、細やかに描く筆があるから、他にはない、いとおしい物語になるのだと思います。
もうひとつ、北村薫の凄さは、豊かな想像力だと私は思っています。北村薫といえばやさしい、人によっては甘いという評価が大方のようですが、恐ろしいこと、残酷なことを考えさせたら、この人に敵う人はそうそういないのではないかと思うのです。
北村薫の物語は、しばしば<運命の悪意>と隣合わせにあります。そして北村薫は、まっとうに生きることが免罪符になるとは考えない。それでも彼らが歩みつづけるのは、見返りがあるからではなく、それを止めれば自分は自分でなくなるからなのです。そこまで考えてしまう北村薫が私は凄いと思う。なんで生きていられるのかなあとさえ思います。
……ぜんぜん『ひとがた流し』の感想になってないんですが。興を削がないようにこのよさを伝えるって、むずかしいです。
帯の惹句がこの物語をよく表していると思うので、ここに引きます。
――かけがえのない友よ。
そして、いとおしい時間たちよ。
この本を読み終えた方で、未読ならこちらもおすすめです。
- 作者: 北村薫,おーなり由子
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2002/06/28
- メディア: 文庫
- クリック: 19回
- この商品を含むブログ (57件) を見る