ミドリコ雑記帖

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松浦理英子『ヒカリ文集』

私が松浦理英子に求めていたものはこれだった、と思う一冊だった。

『裏ヴァージョン』で見え隠れしていたもの、『最愛の子ども』で描かれながら、それでも結局は失われてしまうんだと思っていたものが、『ヒカリ文集』の中には満ちていた。『ヒカリ文集』でも永遠に続きはしないのだけど、失われてはいなかった。

私はこの本を、秋の光が美しく差す電車の中で読んでいた。後半、読みながらずっと、『朝びらき丸東の海へ』の終わりの方の一節を思い出していた。東の果ての海で、海水がかぐわしい真水になり、船員たちは水を飲むだけで、何も食べる必要がなくなった、という場面。
「これは、なんと申そうか、なんにもまして、光に似ているのですよ。」「飲むことのできる光です。もう、この世のはてとは、すぐそこに違いありません。」それと同じような美しいものに、いま私は満たされている、と思った。

読むと必ず泣いてしまうのが分かっているので、なかなか読み返せずにいるのだけど、一生大事に読みたい物語だと思った。ひとつひとつのエピソードが光に似ている。これを読むだけで、光に満たされることができる。