ミドリコ雑記帖

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あさのあつこ『バッテリー』

バッテリー (角川文庫)

(内容に触れていますので、先入観を持ちたくない未読の方はご注意ください)

スポーツは苦手ですがスポーツ小説は好きです。できなかったことができるようになっていく話、埋もれていた才能が花開いていく話、そういうのが好きなんでしょうね。

そういうわけで『バッテリー』もとても楽しく読めたのですが、実はそれと同じくらい苛々もさせられたのでした。
野球をしているときの巧にはとても気持ちよく感情移入できるし、豪とのコンビネーションにはわくわくさせられて、もっと先を、と身を乗り出すような気分にさせられます。
でも、いったん野球を離れると、巧おまえ子供すぎるんだよおッ、と苛々。子供なんですけどね。だってまだ中学生にもなってないし。視点がいろいろ入れ替わるので、豪の気持ちもわかる、お母さんの気持ちもわかる、と余計に苛々するんです。
巧の視点に戻ってくると、こんどは周囲があまりに解ってくれないことに苛々。体の弱い弟の青波がなかなか素敵なキャラクターで、お兄ちゃんのことをちゃんと見て気を遣ってるのですが、弟に対する巧のそっけなさにまた苛々。登場人物それぞれに感情移入できてしまうので、苛々もひとしおなのです。ああ、もどかしい!

でも、なにかとても熱くてつよいものに貫かれている感じがするんですよね。甘くない、むしろ厳しい話に感じられるんですが。ものすごく速くて重い球の爽快感、という感じでしょうか。
野球を知らないミドリコにも、とても面白く読めました。野球好きな人の感想も、ぜひ聞いてみたいです。