ミドリコ雑記帖

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宮部みゆき『誰か』

誰か ----Somebody
淋しげな表紙と語り口に戦々恐々としながら読みましたが、お、思ってたほどは怖くなくてよかった……。ただ、期待する「宮部らしさ」には欠けていて少し残念でした。ミドリコの期待する「宮部らしさ」とは、物語のなかへぐいぐいと引き込む吸引力です。お風呂の栓を抜いたとき、ぎゅううって音をたてて水が渦巻くでしょう。「宮部らしい」と感じる作品を読むたび、毎度あれを思い出すのです。
宮部みゆきは厳しい目でもって物語を紡ぐけれど、その底にあるのは、善きことに拠ってたつ心ではないかなあと思います。北村薫も近いものがあると思うのですが、北村と宮部はまた違っていて、……うーん、思うところはあるけれどうまく言葉にできないなあ。
かつて直木賞を受賞したときに「わたしは犯罪を扱ったものを書くけれど、犯罪を犯す人間の気持ちを本当にはわからない」と宮部が言った、という話を友人から聞いたことがあります。聞いた話なのでどこまで本当かわからないのですが、本当ならいかにも宮部らしいと思うのです。ミドリコにとって宮部みゆきってそういう人で、ちっとも善人ではないミドリコは宮部がちょっと怖いです。
って、これちっとも「誰か」の感想じゃないなあ(毎度のことか……)。