ミドリコ雑記帖

ミドリコが思いついたことをなんでも書く場所。Amazonアソシエイト参加、楽天アフィリエイト利用しています

トップハムハット狂『BLUE NOTE』

 先日MVが公開されて騒いでいたトップハムハット狂のアルバムが発売されました。

BLUE NOTE

BLUE NOTE

 よかった。すごくよかった。
 そして驚きました。

「Next Season」のMVを見たときに、いままで顔出しを避けてるような雰囲気だったAOさんが、生身ひとつでカメラの前に立ってることに驚いて、ソロでやっていくことへの決意のようなものを感じたのですが、アルバムを聞いて、いままでになく心情を吐露する曲が多くて、もっと驚きました。
 いやさ、曲タイトルが発表された時点で気になってはいたんですよ。「その後の心」とか、FAKE TYPE.が突然活動休止した後だけに、もうそれだけで意味深じゃないですか。
 だからその辺のことを匂わせるような曲なのかなと思っていたら、匂わせるどころかそのものずばりで、AOさんがそんな曲を作るとは、と驚いてしまったわけです。他の曲も、ストレートに内心に踏み込んだものが多くて、いや、FAKE TYPE.でも「青の世界線」とかあったけど、なんかもっとストレートで、びっくりしました。

 どちらかというとしっとりした曲が多いんだけど、バラードが苦手な私でも聞き入ってしまう。きれいなだけじゃなくて、AOさんが本気で心の中のことを歌ってるからなんだろうなと思う。そういえば魂音泉の曲でも、いつからかAOさんの曲の心に訴える力が強くなってきた気がしてて、それはこのアルバムを作る過程で、自分と向き合う作業をしてきたからなのかな、と思う。ヴィレッジヴァンガードのサイトでは「あのトリッキーなRAPが帰ってきた!」ってコピーがついてたりするんですけど、それよりも「マイペースに創り上げた自分だけの世界」のほうが近いなと思います。

 好きな曲って言われると結局は「全部」なんですけど、電波少女のハシシさんの声がすごく切なくて強くて、知らないところでこの二人は一緒に何かと戦って乗り越えてきたのかなって思う「Slip Walker feat.ハシシ from 電波少女」とか。これ、近未来SFっぽいアニメのクライマックスのところで流れたら絶対号泣するやつだと思う。「その後の心」は、アルバム聞いてイントロ2秒くらい聞いたところで「この曲! 好き!!」ってなりました。このアルバム、トラックも全部あおさんなんですよ……。最近ネットラップ界隈で「きれいなんだけどちょっと引っかかって癖になる感じ……好き……」って思うとだいたいあおさんのトラックです。「SHABON-DAMA」の3+3+2のリズムも癖になる。これ、素直に空に昇っていけない、軽いんだけどちょっと重いシャボン玉っていう感じのリズムで、そう思うとまた切ないですね。「哀合傘」の弱さをさらけ出してくる感じも、本当なら私こういうタイプの曲苦手なはずなんですけど、好きです……なんか好きなんです……。
 刺さるのは「Whereabouts」で、トラックごとすごい胸に来ます……これライブで聞いてみたいんですけど、ライブで聞いたら盛り上がるんじゃなくてひれ伏して泣いてしまうタイプの曲ですね……「Parallel Blue」もトラックは可愛いのに切ない。
「Memory Lane feat.らっぷびと」はらっぷさんが柔らかいけどかっこよくAOさんを受け止めていて、二人の自在な声が絡み合うところがすごくいいし、K’sさんのJAZZっぽいピアノがたまらないです。
「HWB」はFAKE TYPE.っぽいあおさんなのかなっていう感じで、「青色一号」は久しぶりの和風な感じのあおさんなのかーと思って聞いてたんですけど、青色のほうは歌詞を見て、そんな内容だと思ってなかったのでなんかうわってなりました。
 そんでみんな待ってた「Do it right feat.雨天決行、ill.bell(RainyBlueBell)」は、私はもうこの三人が一緒にやってるだけで涙が出てくるんですけど、雨天さんの「kick in the door」がめちゃくちゃかっこいい……昔の曲の歌詞を出してこられるとそれだけでうわってなりますけど、三人のそれぞれのソロアルバムのタイトルを並べて、「大変長らくお待たせしました」っていうところほんと泣けますね……三人ともこのままラップやめちゃうんじゃないかって思ってた時期があるだけに、本当に、本当に、待ってたよ!っていうか、ありがとう!っていうか……。
 最後の「ぐんないぶるーす」は、いろいろ深読みできそうなこのアルバムの中にあってどう受け取ったらいいのかいまいちわかってないんですけど、あったかくてかわいくて好きな曲です。

 私は初期からのファンではないんですけど、途中からでも、すごいなかっこいいなって追いかけてきた人がこういうアルバムを出してくれてとてもとても嬉しいし、あおさんが生身の自分をここまでさらけ出したアルバムを作ったってことにすごい感慨を覚えるんですけど、一方で、AOさんのこと知らない人にとってこのアルバムってどうなのかな、と思わないでもないです。曲は本当に文句なしにいいけど、知らない人からしたらここまでの経緯とか、昔の曲のフレーズとか「知らんがな」ってことだろうし……。(でも逆に、何も知らないでこのアルバムに出会って感動したかったなって気持ちもする。これまでの歴史とか思い入れとかなしにこの曲たちに出会ってみたかったな)

 まあそんなわけで、一般受けするんやろかと勝手な心配してるんですけど、私はこのアルバムが聞けてすごく嬉しいし、AOさんにとってこのアルバムを作ることは必要なことだったんだろうなと思います。だからこのアルバムが売れてくれたらいいなと思う。
 そしてこの次、AOさんはどんな歌を歌うのか、全然見当がつかないんですけど、どの方向にどんな風に歩き出すのか、その旅を見守ることができればいいなと思っています。

 Spotifyでも聞けます