ミドリコ雑記帖

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関西二期会 第66回オペラ公演『愛の妙薬』

指揮 児玉宏
演出 鈴木敬介

管弦楽 ザ・カレッジ・オペラハウス管弦楽団

アディーナ 三村 浩美
モリーノ 北村 敏則
ベルコーレ 伊藤  正
ドゥルカマーラ 片桐 直樹
ジャンネッタ 渡邉 早貴子

作曲 G.ドニゼッティ
台本 F.ロマーニ
アルカイックホール

ひさしぶりにオペラを見てきました。が、どう書いたものかと悩んでいたずらに日々を過ごしてしまいました。
愛の妙薬』は明るく楽しく他愛のない農村の物語で、笑えたし楽しかったし細かいところまで遊びがあって面白く、終演後の感想は「楽しかった!」なのですが、いざ感想を書こうと思うといちばん残ってるのは二幕のアリアなのです。なので、流れは無視してとりあえずそのアリアのことを書きます。

歌がはじまったとたん、舞台の奥行きが増したみたいに感じて、広い深い世界のなかにひとり立つネモリーノにきゅーっとひきつけられました。
大きな鳥の翼に乗って、一緒に空を旅しているみたいだった。
山を越えて谷を抜けて、広い野原を見下ろして、最後にふわりと地面に降り立って、ものすごく胸を締めつける音を聞きました。
なんて説明したらいいかわかんないんですけど、最後の何小節かがものすごくて、わずかな動きでホール中の心をぎゅううってつかむ響きで、もうたまらんかったです。みんなが息をひそめて聞き入る無音の瞬間、なんか別の空間があそこにある気がした。
アリアが終わって、もう万雷の拍手で、いっぱい声もかかってたけど、もう動きたくないからすみっこで泣かせといて!て思いました。あれを目の前で歌われたら、妙薬とか使わなくてもそれだけでアディーナだって惚れちゃうよ!

が、前述のように『愛の妙薬』は全体にはコミカルなお話で、北村先生扮するネモリーノは村の純朴な青年で、麦わら帽に斜めがけのかばん、長い上着という幼稚園児みたいな恰好の、憎めない可愛らしい人でした。すみっこで牛(かなりリアル。最初は本物かと思った。出てくるたびに舞台の笑いをとってた)と仲良くしてる様子が愛らしいったらなかったです。(恰好いいアリアを歌われてるときも、姿は幼稚園児ルックでした。ぜんぜん気にならなかったけど)
妙薬を売りにくるインチキ博士ドゥルカマーラの達者でコミカルな様子も素敵でした。

ところでこれは公演とは関係ないのですが、アディーナって女はどうなのよ?という話で、終演後、友人たちとちょっと盛り上がりました。だってアディーナって、ずっとネモリーノの求愛をはねつけてて、さっさとあきらめなさいよ!みたいなことも言ってて、あてつけに他の男と結婚しようとしたりして、そんでも特別痛い目に遭うわけでもなく、ネモリーノ(叔父の遺産つき)を手に入れちゃうってそれどうなの? 「一幕が終わったとき気ぃ悪くてしょうがなかった」「とりあえずあの女はやめとけ」とか言い合って溜飲を下げていました。ロマーニ(台本の人)とは趣味が合わなさそうだな!

ちなみに一緒に見に行ったろちさんは、群衆の芸の細かさにいたく感心した様子でした。私は牛に感動しました。足から推測して二人の人で演じてると思うのですが、足以外は実に本物っぽく、尻尾も動くし。かわいいし。