ミドリコ雑記帖

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三浦しをん『舟を編む』

舟を編む

舟を編む

 いつの間にやら<職業小説の名手>とかいう枕詞のついてた三浦しをん本屋大賞受賞作。
 三浦しをん、『まほろ駅前多田便利軒』がわりと苦手で、『秘密の花園』も辛くて、なのであんまり読んでなかったんですが、こないだ読んだ『きみはポラリス』とこの本はわりかし面白かった。面白かったけど、やっぱりなんか辛い。
 三浦しをんの辛さって、感情移入できないとかいうんじゃなくて、道徳観が合わないっていうのでもなくて、へんに近くて怖い、ていう感じです。周りとうまく合わせられない子供時代を経て、コミュニケーション力不足のまま大人になっちゃった自分、本が好きで、人に軽々しく踏み込まれたくない領域があって、でも意外と簡単に踏み荒らされて笑いものにされちゃったりしてた自分、に、三浦しをんの登場人物たちはなんか近い。だけど、登場人物たちに安易な救済が与えられるわけではなくて、だからなんかね、他人事じゃない恐怖感があるんですよね……。
 そういう恐怖の気配を感じながら読みはじめて、でも気持ちよく読み終われた……かな。でも、だから「じゃあ三浦しをんの別の作品いってみよう!」って思えるかっていうと、やっぱり怖いほうが先に立つ、のです。他人に訊かれたら「面白かったよ、読んで損はないよ」って言える作品だけど。