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西澤哲『子どものトラウマ』

子どものトラウマ (講談社現代新書)

子どものトラウマ (講談社現代新書)

自分が予想していなかった事態に遭遇したり、もしくは取り返しのつかないようなミスを犯してしまったことに気づいたとき、その経験は、その人の心にとって一種の「異物」となる。その出来事に出くわすまでにその人が持っていたものの見方や考え方、つまり認知的な枠組みとは相容れない異物となるのである。こうした異物が心に入り込んだとき、心は何とかしてその異物を「消化」して、既存の認知的な枠組みの中に取り込もうとする。この、異物を取り込もうとする努力は、たとえばその体験を何度となく思い出すというかたちで、もしくは他者に繰り返し話をするということによってなされる。(p.66)

愛着が形成されないことの最悪の結果は、「対象の内在化」の失敗ということだろう。対象の内在化とは、自分を大切にしてくれる人を心の中にすまわせることをいい、これは愛着形成の延長線上に生じるものと考えられる。つまり、適切な愛着関係を経験した子どもは、自分を愛し、はぐくんでくれる親などのイメージを心の中に取り入れるわけである。この内在化によって、子どもは物理的に親から離れていても、心の中にすんでいる親といっしょにいることが可能となる。このあたりを、ウイニコットは「孤独にならずに一人でいることのできる能力」と述べている。(p.104)

「そんなに傷つきやすかったらこの先生きていけないよ」と言われても、じゃあどうしたら傷つかなくなれるのかってことはなかなか教えてもらえないもので、そのへんを教えてくれたのが私にとってはこの本だなあと思うわけです。自分の中に自分を肯定してくれる人のイメージを取り入れるって、大人になってからも有効だと思うんですよね。