ミドリコ雑記帖

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鷺沢萠『ばら色の人生』

ばら色の人生―La vie en Rose
めめさん唯一の戯曲集。買っちゃったよ税込み1570円。お金ないのにさー。

実はめめさんの小説が苦手でした。高校生のころからずっと読んでいて、けっこう集めてて、でも、読んでてしんどかった。それは、いま思えば、めめさんの書く話が、ものすごく痛いところをついてきたからだったのでしょう。頼むしそれだけは言わんとって、てところを。
めめさんが死んだことを知った日、出たばっかりの『ウェルカム・ホーム!』(小説のほう)を読みました。四月のあったかい日で、部屋の窓をあけて足だけ日向ぼっこしながら、なんでこれを書いた人が自殺しなきゃいけなかったんだろう、とずっと考えていました。
すごく痛くて苦かっためめさんの物語は、どこか違う方向を向きはじめていました。楽して生きてく方法なんてないし、みんな辛くてしんどくて大変だけど、でも、そういうことを越えちゃう何かが、人と人との間にはあるんだよ。『ウェルカム・ホーム!』も、未完の遺作『ビューティフル・ネーム』も、そういう物語でした。書かれたものだけ見ていれば、めめさんにとって生きることは辛いだけのことじゃなくなってきたんだ、って、そう思えるのに。めめさんがいなくなっちゃったいまでも、そう思ってしまうくらいなのに。

最後の鷺沢萠プロデュース公演『ウェルカム・ホーム!』(こちらはお芝居のほう)を、東京まで見に行きました。めめさんがお芝居に噛んでることは知ってたけど、めめさんの物語が苦手だったから、見に行こうとは一度も思いませんでした(実は妹がオーディションを受けて書類審査は通っていたのですが、仮に採用されてても見にいかなかったんじゃないかと思う)。めめさんが死ななかったら、ミドリコはめめさんの小説もあのお芝居も、見ないままだったと思います。

長い前置きになりました。だから、めめさんが死ななかったらこの物語に出会わなかったはずのミドリコが言うのはとっても矛盾してるんですけど、めめさんに生きててほしかった。もっともっと書いてほしかった。ものすごく暗い夜を抜けて、いまようやく、何かが見えてきたところだったはずなのに。

中目黒の小さな劇場で、『ウェルカム・ホーム!』を見ながら、笑って笑って笑って、でも涙をこらえられませんでした。内臓をぎゅうっとつかまれたような気がしました。でも、つらいんじゃなくって、うんうんうんって何度うなずいても足りなくって、「それが言いたかったんだよね、めめさん」って、「でもなんで死んじゃったのよめめさん!」って、胸がいっぱいで、くやしくって。

「今のアタシ、あのころの『なりたい自分』じゃ、全然ないよ。でも……それを誰かのせいにしようとは、アタシは思わないよ。だってそんなの自分のせいじゃん」
ネズミ講と呼ぼうがマルチと呼ぼうがネットワークビジネスと呼ぼうが、本質は変わらへんねん。トイレと呼ぼうがお手洗いと呼ぼうが化粧室と呼ぼうが、便所は便所やねん。キャッシングと呼ぼうがレンタルマネーと呼ぼうが、借金は借金やねん。横文字使うてキレイキレイに言うても、結局は一緒のもんやねん」
「みんな、本当の家族ですよ、血がつながっていないというだけで」


冒頭にも書きましたが、『ばら色の人生』は戯曲集です。(『ばら色の人生』『ビューティフル・ネーム』『ウェルカム・ホーム!』の三作)。最初はとっつきにくいと思います。でも、もし、読もうと思ってくださった人がいるのなら、借りてでも立ち読みでもいいです、戯曲だってだけで放り投げないでください。めめさんの物語に、耳を傾けてください。

11/7に高田馬場で『ウェルカム・ホーム!』の公演のビデオ上映会があるそうです。
詳細はこちら http://www.tssplaza.co.jp/sakuhinsha/book/lavieenrose.htm